救急外来では子どものアトピー性皮膚炎に対して、古い治療法が使われることがよくあります。
なぜこれが大切なのか
お子さんの湿疹(アトピー性皮膚炎とも呼ばれます)が悪化すると、多くの親御さんは急患対応や救急外来を受診します。最近開催されたRevolutionizing Atopic Dermatitis(RAD)カンファレンスで発表されたポスターでは、小児のアトピー性皮膚炎の急な悪化に対して救急医がどのような治療を行っているかを調査し、救急外来での治療が最新の皮膚科のガイドラインと合っていないことが明らかになりました。
研究で調べたこと
研究者たちはEpicという電子カルテのデータを使い、アトピー性皮膚炎の悪化で救急外来を受診した子どもたちにどんな薬が処方されているかを調べました。イェール大学医学部皮膚科の准教授であるChristopher Bunick, MD, PhDがポスターの結果を紹介し、皮膚科の治療の観点から解説しています。
調査結果
救急外来で最もよく処方されていた治療は以下の通りです。
- 弱めの外用ステロイド — 低用量のステロイドが入ったクリームや軟膏を皮膚に塗る治療。
- 内服ステロイド — 飲み薬のステロイド。
- 内服抗ヒスタミン薬 — セチリジンやジフェンヒドラミンなどのアレルギー用の飲み薬。
調査対象の子どもの約5人に1人が、救急外来で内服ステロイドを処方されていました。
なぜ問題なのか
アメリカ皮膚科学会などの最新の皮膚科ガイドラインでは、可能な限りアトピー性皮膚炎に対して内服(全身)ステロイドを長期間または習慣的に使うことを避ける方向に進んでいます。内服ステロイドは長期間使うと安全面で問題が起こることがあり、やめた後に症状が急に悪化するリバウンドもよく見られます。
ここでいう「長期間」とは、30日以上続けて内服することを指します。
また、皮膚科医は重症の乾癬(かんせん)の悪化に対しても内服ステロイドを使わなくなっています。これは安全で効果的な長期治療の選択肢ではないためです。アトピー性皮膚炎の悪化に対しても同じ安全性や再発の懸念が当てはまります。
抗ヒスタミン薬はどうなの?
ポスターではアトピー性皮膚炎に対して内服抗ヒスタミン薬がよく使われていることも示されました。Bunick医師によると、これらの薬は湿疹の皮膚の炎症を抑える効果はほとんどなく、かゆみの緩和にもあまり役立たないことが多いそうです。
なぜ治療にズレがあるのか
今回の結果は、皮膚科専門医の推奨と救急や急患対応の現場での治療にギャップがあることを示しています。新しい非ステロイドの外用薬や、全身ステロイドを避けるべきタイミングについての明確な指針が、皮膚科以外の医療現場に十分に伝わっていないのかもしれません。
救急外来や急患対応チームとの情報共有や実践的な治療プロトコルの共有が進めば、患者さんがより最新の根拠に沿った治療を受けられるようになるでしょう。
親御さんや介護者の方へ
お子さんが湿疹の悪化で急患対応を受ける際は、治療を担当する医師に「なぜその薬を使うのか」「どのくらいの期間使うのか」「外用薬中心の治療や皮膚科の受診が必要か」などを確認するのはとても大切です。
治療の選択は、悪化の程度や他の健康状態、悪化の頻度によって変わります。お子さんの病歴をよく知る医師とよく相談してください。
すぐに医師に相談すべきとき
湿疹の部分に感染の兆候(赤みが強くなる、熱を持つ、膿が出る、腫れがある)、激しい痛み、出血、急速に広がる発疹、高熱がある場合、または急に悪化した原因がわからない場合は、すぐに医療機関を受診してください。普段の悪化の場合は、かかりつけ医や皮膚科医とのフォローアップの計画を必ず立てましょう。
目に見える変化を記録する
発疹の写真を撮ったり、簡単な日記をつけたりすることで、治療の効果や発疹の変化を医師と一緒に確認しやすくなります。皮膚科受診の準備にも役立ちます。
免責事項:この記事は医療会議で発表された内容と専門家の解説をまとめたものです。情報提供を目的としており、医療アドバイスではありません。治療の判断は必ずお子さんの主治医や皮膚科医と相談してください。
参考文献
- Revolutionizing Atopic Dermatitis (RAD) conference poster presentation; analysis of Epic electronic health record prescribing patterns. (出典:Christopher Bunick, MD, PhDによる発表と解説)
- DiRuggiero D, DiRuggiero M. Beyond skin deep: the systemic impact of topical corticosteroids in dermatology. J Clin Aesthet Dermatol. 2025;18(1-2 Suppl 1):S16-S20. https://jcadonline.com/beyond-skin-deep-the-systemic-impact-of-topical-corticosteroids-in-dermatology/
- Gregoire ARF, DeRuyter BK, Stratman EJ. Psoriasis flares following systemic glucocorticoid exposure in patients with a history of psoriasis. JAMA Dermatol. doi:10.1001/jamadermatol.2020.4219. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7675213/